膝の内側や外側の靱帯を損傷した際、多くの方がサポーターを使用されています。確かにサポーターは痛みを軽減し、患部を保護する役割がありますが、実は長期的な視点で見ると、サポーターに頼りすぎることが回復を遅らせる原因になることがあります。今回は、当院での臨床経験を基に、なぜサポーターに頼りすぎない方がいいのかについてお話しします。
サポーターの役割と限界
サポーターは、膝関節を固定・支持することで痛みを和らげ、不安定感を軽減してくれます。受傷直後の急性期においては、患部の保護という意味で有効な手段の一つです。
しかし、サポーターはあくまで「補助具」であり、根本的な治療ではありません。サポーターに頼りすぎると、かえって本来の回復プロセスを妨げてしまう可能性があるのです。
サポーターに頼りすぎるとどうなるのか
1. 筋力低下を招く
サポーターで膝を固定し続けると、本来その関節を支えるべき筋肉が使われなくなります。特に膝の安定性に重要な大殿筋やハムストリングスなどの筋肉は、適切な負荷がかからないと徐々に筋力が低下してしまいます。
大殿筋は骨盤に広く分布している筋肉で、下半身の安定には欠かせません。歩行やランニング時には推進力を生み出し、ジャンプの着地時には「knee in（膝が内側に入る動き）」を制御しています。サポーターに頼りすぎて大殿筋を使わない状態が続くと、この重要な制御機能が低下し、復帰後に再発するリスクが高まります。
2. 重心バランスの崩れが定着する
サポーターを装着していると、痛みのない側の足に重心をかける癖がつきやすくなります。このような偏った重心バランスのまま生活していると、体全体のバランスが崩れ、それが定着してしまいます。
重心バランスが崩れた状態では、筋力低下や関節の可動域制限が起こりやすくなります。結果として、痛みの回復スピードが遅くなるだけでなく、スポーツ復帰後の再発リスクも高まってしまうのです。
3. 本来の機能回復が遅れる
人間の体には本来、損傷した組織を修復し、機能を回復させる力が備わっています。しかし、サポーターで過度に保護し続けると、体が「自分で支える必要がない」と判断し、本来の修復プロセスが十分に働かなくなることがあります。
特に靱帯損傷後は、適切なタイミングで適切な負荷をかけていくことが、組織の修復と機能回復には重要です。サポーターに頼りすぎることで、このタイミングを逃してしまう可能性があります。
当院が考える適切な回復プロセス
当院では、サポーターに頼るのではなく、体本来の機能を回復させることを重視しています。
大殿筋の筋力正常化
受傷後、痛みがある足に荷重をかけなかった期間があるため、大殿筋の筋力がさらに弱くなっていることがほとんどです。当院では、大殿筋の筋力を正常化し、適切な荷重をかけられるように調整していきます。
内臓機能の調整
意外に思われるかもしれませんが、内臓の状態は体の回復と深く関係しています。特に肝臓は、抗炎症作用や全身への血液循環に関わる重要な臓器です。肝臓の働きが悪くなると、炎症がなかなかおさまらず、痛みが長引く原因になります。
当院では内臓の調整も行い、体が回復しやすい状態を作っていきます。
重心バランスの再構築
損傷後に崩れてしまった重心バランスを整えることも重要です。なぜ受傷してしまったのかを知り、どのような体のバランスが適切なのかをしっかりと体に記憶させることが、再発予防につながります。
サポーターとの正しい付き合い方
サポーターは決して「悪」ではありません。重要なのは、使用するタイミングと期間、そして「サポーターなしでも大丈夫な体」を取り戻すことを目標にすることです。
急性期や痛みが強い時期には適切に使用し、徐々にサポーターに頼らない時間を増やしていく。そして並行して、筋力強化やバランス調整を行い、体本来の機能を回復させていく。これが理想的な回復プロセスです。
まとめ
膝の内外側側副靱帯損傷において、サポーターは一時的な補助具としては有効ですが、頼りすぎることは筋力低下、重心バランスの崩れ、機能回復の遅れを招く可能性があります。
「安静しかない」「固定して様子を見るしかない」と言われて悩んでいる方も、適切なアプローチで根本から改善することが可能です。
当院では、なかなか良くならない膝の痛みや、試合・大会までに復帰したいというご要望にも、全力でサポートさせていただきます。サポーターに頼らない、強く安定した膝を一緒に取り戻しましょう。
もし階段の上り下りで違和感がある、ダッシュやジャンプをするのが怖い、といったお悩みがありましたら、ぜひ当院にご相談ください。一人ひとりの状態に合わせた施術で、早期復帰と再発予防の両立を目指します。
