「肩が痛いから、ストレッチをすれば柔らかくなるかな?」
「肩が上がらないので、無理やり伸ばしたほうがいい?」
「YouTubeで見つけた肩のストレッチを続けているけれど、逆に痛くなってきた……」
肩の痛みで悩んでいる方から、このような相談を受けることがあります。
肩が痛くなると、「硬くなっているから伸ばせばいい」と考えがちです。
しかし、肩の痛みがあるからといって、すべての人にストレッチが必要とは限りません。
むしろ、痛みが出ている状態で無理に伸ばすことで、症状を悪化させてしまうこともあります。
今回は、肩が痛いときのストレッチについて、知っておいてほしいポイントをお話しします。
肩が痛い=肩が硬い、とは限りません
肩の痛みがあると、
「肩周りの筋肉が硬くなっている」
「肩甲骨が動いていない」
と思う方が多いと思います。
もちろん、筋肉や関節の動きが悪くなっていることが痛みに関係する場合はあります。
しかし、肩の痛みにはさまざまな原因があります。
例えば、腱や滑液包など肩周辺の組織に負担がかかっている場合や、肩関節の動きそのものに問題がある場合、外傷後に痛みが残っている場合などです。
そのため、原因を確認せずに「とにかく伸ばす」という方法では、かえって痛みを刺激してしまう可能性があります。
「伸ばすと気持ちいい」と「治っている」は別です
ストレッチをすると、
「伸びて気持ちいい」
「肩が軽くなった」
と感じることがあります。
これは悪いことではありません。
ただし、ストレッチをした直後に楽になったからといって、痛みの原因そのものが解決したとは限りません。
例えば、肩を動かすと痛い原因が別のところにあるのに、痛みを我慢しながら肩だけを繰り返し伸ばしていたら、肩への刺激が増えてしまいます。
大切なのは、
「どこが硬いか」だけではなく、「なぜその動きで痛みが出るのか」
を考えることです。
痛みがあるときは「無理に動かさない」ことも大切
肩の痛みが強いときには、無理に大きく動かしたり、痛いところまで伸ばしたりする必要はありません。
特に、
- ストレッチをすると痛みが強くなる
- 終わった後も痛みが残る
- 翌日になると肩の痛みが増えている
- 腕が上がりにくくなってきた
- 力が入りにくい
という場合には、今行っているストレッチが身体の状態に合っていない可能性があります。
一方で、肩の痛みでは「完全に動かさない」ことも必ずしも良いとは限りません。
公的な医療情報でも、肩の痛みがある場合に、痛みを悪化させない範囲で肩をやさしく動かすことが勧められています。完全に使わなくなると、肩の動きがさらに悪くなる場合があるためです。
つまり、
無理に動かすのも違う。まったく動かさないのも違う。
このバランスが大切なのです。
肩の状態によって、必要な運動は変わります
肩の痛みには、いろいろな状態があります。
例えば、肩を動かすと痛いけれど可動域は保たれている人と、痛みだけでなく肩そのものがほとんど動かせない人では、必要なケアは同じではありません。
また、スポーツをしている人なら、
「投げると痛い」
「バレーボールのスパイクで痛い」
「水泳で痛い」
「筋トレのベンチプレスで痛い」
など、競技や動作によって肩への負担も変わります。
だからこそ、インターネットで見つけたストレッチを全員が同じように行えばいい、とは言えません。
当院では「どこまで動かせるか」を確認します
当院では肩の痛みをみる際、「肩が硬いからストレッチしましょう」と最初から決めることはありません。
まず、
どの方向に動かすと痛いのか
どこまでなら痛みなく動かせるのか
左右で動きに違いがあるのか
を確認します。
さらに、肩だけではなく、首や背中、肩甲骨、肋骨、骨盤など身体全体の動きも確認します。
肩は腕だけで動いているわけではありません。
身体を動かすときには、肩甲骨や背中、体幹なども一緒に動いています。
そのため、肩だけを一生懸命伸ばすのではなく、肩に負担が集中している理由を身体全体から考えることを大切にしています。
肩が痛い方ほど「自己流のストレッチ」に注意
ストレッチそのものが悪いわけではありません。
実際、肩の状態によっては、適切なストレッチや運動が改善の一部になることがあります。
問題なのは、
「肩が痛いから、とにかく伸ばす」
という考え方です。
肩の痛みがある方は、まず「自分の肩は何をすると痛いのか」を確認してみてください。
そして、ストレッチをすることで痛みが強くなるのであれば、いったん無理をせず、現在の状態を確認することをおすすめします。
まとめ
肩の痛みがあるからといって、必ずしも強いストレッチが必要なわけではありません。
大切なのは、
- 何をすると痛いのか
- どこまでなら動かせるのか
- 動かした後に症状がどう変化するのか
- なぜ肩に負担がかかっているのか
を確認することです。
「ストレッチしているのに良くならない」
「伸ばすとむしろ痛くなる」
「何をしていいのかわからない」
そんな方は、自己流で無理に続ける前に、一度身体の状態を確認してみてください。
参考文献
- NHS, “Shoulder pain”
- NHS, “Shoulder impingement”
- American Academy of Orthopaedic Surgeons, “Rotator Cuff and Shoulder Conditioning Program”







