「サッカーをしていると、足の付け根が痛くなる」
「キックすると股関節の前あたりが痛い」
「内ももが張っている感じがする」
このような症状で悩んでいませんか?
スポーツをしている方であれば、一度は「グロインペイン」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
グロインペインは、正式にはグロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)と呼ばれます。
特にサッカーやフットサル、ラグビーなど、走る・蹴る・切り返す動作が多い競技で起こりやすいことで知られています。
ただし、ここで一つ知っておいてほしいことがあります。
グロインペインは、一つの場所だけに起こる一つのケガではありません。
グロインペイン=「足の付け根の痛み」だけではない
グロインペインで痛みが出る場所は、一般的に「鼠径部」と呼ばれる足の付け根周辺です。
しかし、実際には、
・内ももの付け根が痛い
・股関節の前側が痛い
・下腹部に痛みを感じる
・恥骨の周辺が痛い
・走ると足の付け根が痛くなる
・キックすると痛みが出る
・方向転換で痛む
など、症状の出方は人によって異なります。
そのため、
「内ももが痛いから内転筋の問題」
「股関節が痛いから股関節だけの問題」
と簡単に決めつけることはできません。
グロインペインにはいくつかのタイプがあります
スポーツ選手の鼠径部痛については、専門家の間でもいくつかのタイプに分類されています。
代表的なものとして、
内転筋関連のグロインペイン
太ももの内側にある内転筋に関連した痛みです。脚を閉じるような動作や、キック動作などで痛みが出ることがあります。
腸腰筋関連のグロインペイン
股関節を曲げる働きをする腸腰筋周辺に関連した痛みです。脚を持ち上げる動作などで症状が出ることがあります。
鼠径部関連のグロインペイン
鼠径部の周辺に痛みが出るタイプです。咳やくしゃみ、腹部に力を入れたときに症状が強くなる場合もあります。
恥骨関連のグロインペイン
恥骨周辺に痛みが出るタイプです。
さらに、股関節そのものが原因となっている場合もあります。
このように、同じ「グロインペイン」と呼ばれていても、関係する場所や症状はさまざまです。
なぜスポーツでグロインペインが起こるの?
サッカーを例にすると、
走る
↓
急に止まる
↓
方向を変える
↓
片脚で踏ん張る
↓
ボールを蹴る
というように、股関節や骨盤にはさまざまな方向から力が加わります。
特にキックや方向転換では、股関節周辺の筋肉だけでなく、体幹や下半身が協調して動く必要があります。
この動きがうまくかみ合わない状態で練習量が増えたり、疲労が蓄積したりすると、鼠径部の一部に負担が集中することがあります。
実際、グロインペインでは、股関節周囲の柔軟性だけでなく、筋力や体幹・下肢の協調性なども関係するとされています。
「内ももを伸ばせば治る」とは限りません
グロインペインになると、
「内ももが硬いからストレッチしよう」
と考える方も多いと思います。
もちろん、状態によってストレッチが必要になることはあります。
しかし、グロインペインは原因が一つとは限りません。
柔軟性の問題なのか。
筋力の問題なのか。
体幹と脚の動きがうまく連動していないのか。
競技中の動作に問題があるのか。
それとも股関節など、別の場所が関係しているのか。
そこを確認せずに、痛い場所だけを一生懸命伸ばしても、症状が変わらないことがあります。
当院では「どこが痛いか」だけで判断しません
当院では、グロインペインの方をみるとき、痛みがある鼠径部だけを確認するのではなく、実際にどの動作で痛みが出るのかを確認します。
例えば、
「走ると痛い」
「キックすると痛い」
「方向転換で痛い」
という場合、それぞれ体の使い方は違います。
股関節だけでなく、骨盤、腰、背中、膝、足などがどのように動いているのか。
左右で動きに違いがないか。
スポーツ動作の中で、どこに負担が集中しているのか。
こうした全身の動きを確認しながら、痛みが出ている理由を考えていきます。
もちろん、すべての鼠径部痛が体のバランスだけで説明できるわけではありません。
症状によっては、股関節の病気や骨・腱などの損傷が隠れていることもあります。
痛みを我慢してプレーを続けないことも大切
グロインペインは、最初は「少し違和感がある」という程度から始まることがあります。
そのため、
「まだプレーできるから大丈夫」
と、そのまま練習を続けてしまうケースがあります。
しかし、キックやダッシュのたびに痛みが出ているのであれば、体から何らかのサインが出ていると考えたほうがよいでしょう。
特に痛みが長く続く、徐々に悪化している、日常生活でも痛む、股関節を動かしにくいといった場合には、整形外科などの医療機関で状態を確認することも大切です。
グロインペインは「足の付け根が痛い」というだけでは、その原因を判断できません。
だからこそ、
「どこが痛いのか」だけではなく、「どの動作で痛いのか」
を見ることが大切です。
スポーツを続けたい方ほど、痛みを我慢して練習を続けるのではなく、早い段階で自分の体の状態を確認してみてください。
参考文献
・日本整形外科学会「鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)」
・Weir A, et al. Doha agreement meeting on terminology and definitions in groin pain in athletes. British Journal of Sports Medicine.
・日本理学療法士協会「股関節機能障害-鼡径部痛症候群」







