「走っていると、膝の外側が痛くなる」
「最初は大丈夫なのに、しばらく走ると膝の外側がズキッと痛む」
「休むと痛みがなくなるけれど、また走ると痛くなる」
ランニングをしている方に、このような症状はありませんか?
その痛みは、ランナー膝(腸脛靭帯炎)かもしれません。
ランナー膝は、ランニングをする人に多くみられる膝の外側の痛みです。
特に長距離を走る方や、走る量が急に増えた方などに起こりやすく、最初は「少し違和感がある」という程度でも、走り続けるうちに痛みが強くなることがあります。
ランナー膝は、なぜ膝の外側が痛くなるの?
ランナー膝に関係するのが、太ももの外側を走っている腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)です。
腸脛靭帯は、骨盤の外側から太ももの外側を通り、膝の外側につながっている組織です。
ランニングでは、膝を何度も曲げ伸ばしします。
その繰り返しの中で、膝の外側にある組織へ負担がかかり、痛みが出ると考えられています。
そのため、
・ランニング中に膝の外側が痛い
・長く走るほど痛くなる
・下り坂で痛みが出やすい
・走った後に膝の外側が痛む
・休むと楽になる
という症状が、ランナー膝ではよくみられます。
「走りすぎ」だけが原因ではありません
ランナー膝になると、
「最近、走りすぎたからだろう」
と考える方が多いと思います。
もちろん、走る距離や練習量が急に増えることは、膝への負担を増やす要因になります。
しかし、それだけが原因とは限りません。
例えば、
・急に走る距離を増やした
・坂道を走ることが増えた
・休養が少ない
・ランニングフォームが変わった
・股関節や足の動きが変わっている
・左右で体の使い方が違う
など、いくつかの要素が重なって症状が出ることがあります。
研究でも、ランナー膝には股関節・膝・足の動きなど、下肢全体の動きが関係する可能性が示されています。一方で、「これだけが原因」と言い切れるほど単純ではないことも分かっています。
「膝が悪いから、膝だけ治す」では足りないことも
膝の外側が痛いと、どうしても膝そのものに目が向きます。
もちろん、痛みのある場所を確認することは大切です。
しかし、ランニングでは膝だけで走っているわけではありません。
足で地面を踏み、足首が動き、膝が曲がり、股関節が動き、骨盤や体幹も連動しています。
例えば、股関節や足の動きに問題があれば、その影響が膝に現れることがあります。
だからこそ、
「膝が痛い=膝だけに原因がある」
とは限りません。
痛みが出ている場所だけではなく、走るという動作全体を見ることが大切です。
走る前のストレッチだけでは解決しないことも
ランナー膝になると、
「太ももの外側が硬いから、しっかり伸ばそう」
と考える方もいます。
しかし、ランナー膝は単純に「硬いから起こる」というものではありません。
また、腸脛靭帯そのものをストレッチすれば必ず症状が改善する、というわけでもありません。
現在の研究では、股関節周囲の筋力トレーニングや動作へのアプローチなど、複数の方法が検討されていますが、すべてのランナーに共通する一つの治療法が確立しているわけではありません。
そのため、痛いところをただ伸ばすのではなく、なぜ走ったときに膝の外側へ負担が集中しているのかを確認することが重要です。
当院では、走る動作まで確認します
当院では、ランナー膝の方をみるときに、膝の外側だけを確認して終わりにはしません。
「いつ痛くなるのか」
「何kmくらい走ると痛くなるのか」
「平地と坂道で違いがあるのか」
「走った後や翌日にどうなるのか」
といった症状の出方を確認します。
さらに、
・股関節の動き
・膝の動き
・足首の動き
・左右の体の使い方
・片脚で立ったときの安定性
・実際のランニング動作
なども確認します。
痛みのある膝だけを見るのではなく、走るという一連の動作の中で、どこに負担が集中しているのかを考えていきます。
痛みを我慢して走り続けるのはおすすめできません
ランナー膝でよくあるのが、
「走り始めは痛くないから大丈夫」
と、そのまま走り続けてしまうケースです。
しかし、走っているうちに痛みが強くなるのであれば、現在の走行量や負荷が体に合っていない可能性があります。
痛みを我慢して距離を伸ばすのではなく、一時的に走る距離や頻度を減らすなど、負荷を調整することが大切です。
痛みが強い、歩いても痛い、症状が長期間続いている、膝が腫れている、外傷後から痛みがあるといった場合には、ランナー膝以外の原因も考える必要があります。
そのような場合には、整形外科などの医療機関で一度状態を確認してください。
「膝の外側が痛い」をそのままにしない
ランニングは健康維持にも、体力づくりにも、競技力向上にも、とても良い運動です。
だからこそ、膝の痛みを我慢しながら走り続けるのではなく、
「なぜ走ると膝の外側に負担がかかるのか?」
を考えることが大切です。
ランナー膝は、単純に「膝が悪い」「走りすぎた」だけでは説明できないことがあります。
走る量、走り方、股関節や足の動き、体全体の連動などを一つずつ確認することで、自分では気づかなかった負担のかかり方が見えてくることがあります。
「走りたいのに膝の外側が痛い」
「休むと楽になるけれど、走るとまた痛くなる」
そんな方は、痛みだけを我慢するのではなく、走り方と体の使い方を一度見直してみることをおすすめします。
参考文献
・van der Worp MP, et al. Iliotibial band syndrome in runners: a systematic review. Sports Medicine.
・Sanchez-Alvarado A, et al. Effects of conservative treatment strategies for iliotibial band syndrome on pain and function in runners: a systematic review. Frontiers in Sports and Active Living. 2024.
・Foch E, et al. Lower extremity kinematics during running and hip abductor strength in iliotibial band syndrome: A systematic review and meta-analysis. Gait & Posture. 2023.







