今日は手首の痛みで悩まれている方に、ぜひ知っていただきたい「TFCC損傷と首の関係」についてお話しします。
手首が痛いのに首が原因?
「手首が痛いのに、なぜ首を診るのですか?」
施術中、患者様からこのような質問をいただくことがよくあります。実は、TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)で手首に痛みを抱えている方の多くに、首の問題が隠れているのです。
当院に来院されるTFCC損傷の患者様を検査すると、約8割の方に首のコリや可動域の制限が見られます。これは決して偶然ではありません。
首と手首がつながるメカニズム
人間の体は、すべてが連動して働いています。特に首から出ている神経は、肩、腕、そして手首まで伸びています。
神経の流れが重要
首には頸椎(けいつい)という7つの骨があり、その間から腕や手に向かう神経が枝分かれして出ています。この神経を「腕神経叢(わんしんけいそう)」と呼びます。
首の筋肉が硬くなったり、頸椎の配列が乱れたりすると、この腕神経叢が圧迫され、手首の筋肉や関節の働きに影響を与えてしまうのです。
筋肉の連動性
首の筋肉が緊張すると、肩、上腕、前腕へと連鎖的に緊張が伝わります。すると前腕の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)のバランスが崩れ、手首に過度な負担がかかるようになります。
特にスポーツをされている方は、バットやラケットを振る動作で、この連鎖的な緊張がさらに強まり、TFCC損傷を引き起こしやすくなるのです。
実際の症例から
16歳の高校生ラグビー選手のケースをご紹介します。
彼は左手首の痛みで来院されましたが、問診で過去に首のケガをしていたことが判明しました。詳しく検査をすると、首の可動域が著しく制限されており、左の肩甲骨の位置も下がっていました。
施術では手首だけでなく、首の調整を重点的に行いました。すると、首の可動域が改善するにつれて、肩の動きもスムーズになり、最終的には手首の痛みも大幅に軽減したのです。
このように、首の問題を解決することで、手首の症状が劇的に改善するケースは珍しくありません。
首に問題が起こる原因
では、なぜ首に問題が起こるのでしょうか。
スマートフォンやパソコンの使用
現代人の多くが長時間、前かがみの姿勢でスマートフォンやパソコンを使用しています。この姿勢は首に大きな負担をかけ、ストレートネック(首の自然なカーブが失われた状態)を引き起こします。
過去のケガ
むち打ちや転倒など、過去に首を痛めた経験がある方は要注意です。そのときは治ったと思っていても、首の配列に微妙なズレが残っていることがあります。
スポーツ動作
野球、テニス、ゴルフなどのスポーツでは、体を回旋させる動作が多くあります。このとき、首の回旋動作も伴いますが、首の可動域が制限されていると、その代償として肩や手首に負担がかかってしまいます。
当院でのアプローチ
当院では、TFCC損傷の患者様に対して必ず首の状態をチェックします。
詳細な検査
まず首の可動域、筋肉の緊張度、頸椎の配列を丁寧に検査します。そして肩甲骨の位置、肩関節の動き、橈骨と尺骨のバランスまで、上肢全体の連動性を確認していきます。
優しい施術
首はデリケートな部位ですので、強い刺激は与えません。ソフトな調整で、首の筋肉の緊張を取り除き、頸椎の配列を整えていきます。
全身のバランス調整
首だけでなく、骨盤や背骨など体全体のバランスも整えます。土台が安定することで、首への負担も軽減され、手首の症状も改善しやすくなるのです。
セルフケアのポイント
ご自宅でできる首のケアもお伝えします。
ストレッチ
首を左右にゆっくり倒したり、回したりするストレッチを1日3回程度行いましょう。ただし、痛みが出る範囲では行わないでください。
姿勢の意識
スマートフォンを見るときは、目の高さまで持ち上げるように心がけましょう。パソコン作業では、1時間ごとに立ち上がって首を動かす習慣をつけることをおすすめします。
枕の見直し
高すぎる枕や柔らかすぎる枕は、首に負担をかけます。首のカーブを自然に保てる枕を選びましょう。
まとめ
TFCC損傷は手首の問題と思われがちですが、実は首の状態が大きく影響しています。手首だけを治療していても改善しない場合は、首の問題を疑ってみる必要があります。
当院では、手首の痛みの根本原因を見つけ出し、首を含めた全身のバランスを整えることで、早期のスポーツ復帰をサポートしています。
「もう1ヶ月以上手首の痛みが続いている」 「サポーターをしてもなかなか良くならない」 「手術は避けたい」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。手首だけでなく、首を含めた全身からアプローチすることで、きっと新しい改善の道が見えてくるはずです。







