「子どもは肘の痛みを訴えていないから、心配ないだろう」
「普通に練習できているし、肘も問題なく曲げ伸ばしできている」
「野球肘は、投げると痛くなるものだと思っていた」
成長期の野球選手を見守る保護者の方の中には、このように考えている方もいるかもしれません。
確かに、野球肘の中には投球時の痛みがきっかけで見つかるものがあります。しかし、成長期の肘の障害には、初期には痛みなどの自覚症状が目立たないものもあります。
今回は、痛みが少ない場合にも注意したい野球肘と、早期発見のために知っておきたいポイントを解説します。
野球肘には、痛みが目立ちにくいタイプもある
野球肘は一つの病気の名前ではなく、投球動作によって起こる肘の障害をまとめた呼び方です。
肘の内側・外側・後ろ側など、負担がかかる場所によって、起こる障害の種類が異なります。
その中でも、成長期の選手で注意したいものの一つが、肘の外側に起こる「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(じょうわんこつしょうとうりだんせいこつなんこつえん)」です。
少し難しい名前ですが、簡単にいうと、肘の外側にある骨と軟骨が、繰り返しの負担によって傷つく障害です。
この障害は、初期には痛みがはっきりしないことがあります。症状が進むと、肘の痛みや曲げ伸ばしの制限が出ることがあり、進行した場合には治療が長引いたり、手術が必要になったりすることもあります。
そのため、「痛くないから問題ない」とは言い切れません。
こんな変化があれば、肘の状態を確認しましょう
痛みがない場合でも、普段と違う変化に気づくことがあります。
例えば、次のような様子はありませんか?
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片方の肘だけ、伸ばしきりにくい
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肘を曲げたときに左右差がある
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投球フォームが以前と変わった
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投球後に肘を気にする様子がある
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以前より投げにくそうにしている
これらの変化があれば、必ず骨や軟骨に障害があるというわけではありません。しかし、成長期の野球選手では、肘の動きの変化も見逃したくないサインです。
特に、肘の曲げ伸ばしに左右差がある場合や、投球動作に変化が見られる場合には、自己判断で練習を続けるのではなく、整形外科で相談しましょう。
なお、痛みがない選手でも、野球肘検診などで異常が見つかることがあります。地域やチームで検診の機会があれば、活用することも早期発見につながります。
なぜ、痛みが出る前に見つけることが大切なの?
骨や軟骨の障害は、初期と進行した段階で、状態や必要な対応が異なります。
特に成長期の肘の外側に起こる障害では、早い段階で見つけることが重要です。痛みが出るまで気づかずに投球を続けてしまうと、障害が進行してしまう場合があります。
医療機関では、症状や肘の動きを確認したうえで、必要に応じてレントゲンやMRIなどの画像検査を行います。
見た目や本人の感覚だけでは、骨や軟骨の状態を正確に判断することはできません。
そのため、痛みがないことだけを理由に検査が不要と決めつけるのではなく、年齢や競技歴、肘の動き、医師の判断などを踏まえて確認することが大切です。
身体全体の動きも、肘への負担を考える手がかりになります
投球動作では、足で地面を踏み、股関節や体幹を使い、その動きを肩や腕へとつなげていきます。
そのため、肘への負担を考える際には、投球数だけでなく、身体全体がどのように動いているかを確認することも役立ちます。
当院では、医療機関での評価や回復状況を踏まえながら、肩や肩甲骨、体幹、股関節、足首などの動きや、投球時の身体の使い方を確認します。
ただし、身体のバランスを確認することだけで、骨や軟骨の障害を発見したり、治したりできるわけではありません。骨や軟骨の状態を確認するためには、医療機関での診察や必要な検査が欠かせません。
身体の動きの確認は、状態に応じて競技復帰を目指す段階や、今後の負担を考える際に行うものです。
痛みがなくても、定期的に身体を確認する習慣を
成長期は、身体が大きく変化する時期です。本人が痛みを訴えていなくても、肘の動きや投球時の様子に変化がないかを確認することは大切です。
保護者の方は、普段から肘の曲げ伸ばしに左右差がないか、投球後に違和感を訴えていないか、練習量が過度になっていないかを気にかけてみてください。
気になる変化がある場合は、早めに整形外科で相談しましょう。野球肘検診を受ける機会があれば、痛みがない場合でも活用を検討してください。
当院でも、医療機関での評価を踏まえ、身体の動きや投球動作を確認しながら、競技復帰に向けた身体づくりをサポートします。
野球を長く楽しむために、痛みが出てから対応するだけでなく、成長期の身体を定期的に確認する意識を持ちましょう。
参考文献・参考情報
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日本整形外科学会「野球肘」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/baseball_elbow.html -
済生会「野球肘」
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/baseball_elbow/ -
日本理学療法学会連合「投球障害肩・肘理学療法ガイドライン」
https://www.jspt.or.jp/guideline/2nd/throw/







