今回は「腱鞘炎」についてお話しします。手首や指の痛みで悩んでいる方、マッサージや湿布をしても一時的にしか良くならない方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
実は、腱鞘炎が治りにくい本当の理由は「血液循環」と「水分」に深く関わっているのです。
腱鞘炎とは
腱鞘炎は、指や手首を動かす「腱」が通る「腱鞘」というトンネル状の組織に炎症が起こる状態です。
パソコンやスマートフォンの長時間使用、育児での抱っこ、美容師さんのハサミ作業など、同じ動作を繰り返すことで腱と腱鞘の間に摩擦が生じ、炎症を引き起こします。
主な症状として以下のようなものがあります。
- 手首や指の付け根の痛み
- 動かすときの引っかかり感
- 朝起きたときのこわばり
- 腫れや熱感
- ペットボトルの蓋が開けられない
- 物を持つと痛い
放置していると日常生活に支障をきたすため、早めの対処が大切です。
血液との関係性
血液循環の問題
炎症を起こしている組織を修復するには、十分な栄養と酸素が必要です。これらは血液によって患部に運ばれます。
しかし、血液の流れが悪くなっていると、せっかくの栄養や酸素が患部に届かず、治癒が遅れてしまうのです。
特に手や指は心臓から遠く、血管も細いため、もともと血流が滞りやすい部位です。デスクワークで長時間同じ姿勢を続けると、肩や首、腕全体の筋肉が緊張し、さらに血流が悪化します。
血液の役割を知る
血液は体重の約8%を占め、私たちの命を支える重要な存在です。
血液の中には以下のような細胞が流れています。
赤血球
酸素や二酸化炭素を運ぶ役割があります。血液が赤いのは、赤血球の中にある「ヘモグロビン」という成分が赤いからです。ヘモグロビンはタンパク質と鉄分で作られており、全身の隅々まで酸素を届けています。
白血球
ウイルスや細菌などの異物から身体を守る「免疫」の働きを担っています。白血球が適切に機能することで、炎症を抑え、組織の修復をサポートします。
血小板
怪我をしたときに血を止める役割があります。組織が傷ついたときに、素早く修復を開始するためのシグナルを出します。
これらの細胞が血液の流れに乗って全身を巡ることで、身体は正常に機能し、傷ついた組織を修復することができるのです。
水分不足が回復を妨げる
意外に思われるかもしれませんが、体内の水分量も腱鞘炎の回復に大きく影響します。
血液の55%は「血漿」という液体
血液の45%は赤血球や白血球などの細胞、残りの55%は「血漿(けっしょう)」という液体成分です。
この血漿の中に栄養素やミネラルが溶け込んでおり、細胞たちを運ぶ「乗り物」の役割を果たしています。
水分が不足すると血漿が減り、血液の粘度が高くなります。つまり、血液がドロドロになって流れにくくなるのです。
その結果、患部への栄養供給と老廃物の排出、両方が滞ってしまいます。
組織の柔軟性も低下する
腱や腱鞘などの軟部組織も、適切な水分を保つことで柔軟性を維持しています。水分不足により組織が硬くなると、摩擦が増え、炎症が悪化しやすくなります。
血液循環と水分から考える改善策
では、どうすれば血液循環を改善し、腱鞘炎を根本から良くすることができるのでしょうか。
1. こまめな水分補給
1日に必要な水分量は体重や活動量によって異なりますが、一般的に1.5〜2リットルが目安です。
ポイント
- 一度にたくさん飲むのではなく、こまめに少しずつ飲む
- できるだけ常温の水や白湯を選ぶ
- コーヒーや緑茶などカフェイン飲料は利尿作用があるため、水分補給としてカウントしない
- 朝起きたとき、入浴前後は特に水分が不足しやすいタイミング
鉄分補給や水分補給は、血漿を増やし、赤血球のヘモグロビンを作るために役立ちます。体の仕組みから健康維持のヒントが見えてきますね。
2. 全身の血流を改善する
患部だけでなく、全身の血流を良くすることが重要です。
・軽い運動
散歩やラジオ体操などの軽い運動は、全身の血流を促進します。1日20〜30分程度、無理のない範囲で体を動かしましょう。
・入浴で温める
シャワーだけでなく、お風呂に浸かり身体を温めることで血管が拡張し、血流が改善します。38〜40度のぬるめのお湯に15〜20分程度浸かるのがおすすめです。
・ストレッチ
首、肩、腕のストレッチを行うことで、手先への血流経路が開きます。デスクワーク中は1時間に1回程度、軽くストレッチを入れましょう。
3. 栄養バランスを整える
血液の質を高めるためには、栄養バランスの取れた食事が欠かせません。
タンパク質
組織の修復に必要な材料です。肉、魚、卵、大豆製品などをバランスよく摂取しましょう。
鉄分
赤血球のヘモグロビンを作るために必要です。レバー、赤身肉、ほうれん草、小松菜などに多く含まれます。
ビタミン・ミネラル
特にビタミンB群は血流改善に、ビタミンCは腱などの結合組織の修復に重要です。野菜や果物を積極的に取り入れましょう。
4. 姿勢と使い方を見直す
いくら血流を改善しても、患部に負担をかけ続けていては改善しません。
- パソコンやスマートフォンを使うときの姿勢
- キーボードやマウスの位置
- 手首の角度
- 作業の合間の休憩
これらを見直すことで、患部への負担を減らすことができます。
5. 冷えを避ける
体の冷えは血流を悪化させる大きな要因です。特に冷房の効いた部屋では、手首や指先が冷えやすくなります。
- リストバンドやサポーターで保温する
- 冷たい飲み物を控える
- 室内でも靴下を履く
- エアコンの設定温度を調整する
こうした小さな工夫が、血流改善につながります。
当院での施術アプローチ
当院では腱鞘炎に対して患部だけを見るのではなく全身のバランスを整える「重心バランス整体」を行っています。
骨盤や背骨の歪み、重心バランスの崩れにより、血流が阻害されている箇所を見つけ出し、手技によって改善していきます。
特に首や肩、腕全体の筋肉の緊張を緩和し、手先への血流経路を確保することで、患部の自然治癒力を高めていきます。
当院の『バランス整体』は循環を良くする効果もあるので、施術後に身体がポカポカしてきたり、軽くなったりする方が多くいらっしゃいます。
また、日常生活での水分補給や栄養、運動習慣などのアドバイスも行っています。
まとめ
腱鞘炎は「使いすぎによる炎症」というシンプルな問題ではありません。血液循環の滞りと体内の水分不足が、症状を長引かせる大きな要因となっています。
現代は運動不足や偏った食生活に陥りやすく、血液の流れが悪くなり、身体に様々な症状が現れます。
血液の流れが悪くなれば、栄養を届けたり、免疫に関係する細胞が全身に行き届かなくなります。その結果、肩こり、腰痛、手足の冷え、疲れやすさ、お肌のトラブルなど、様々な不調につながるのです。
患部を休ませることも大切ですが、それと同時に、
- こまめな水分補給
- 全身の血流改善(軽い運動、入浴、ストレッチ)
- 栄養バランスの取れた食事(タンパク質、鉄分、ビタミン)
- 姿勢と使い方の見直し
- 体を冷やさない工夫
これらを実践することで、体の内側から腱鞘炎を改善する力を高めることができます。
時折いまの生活を見直して、簡単なことから意識的に取り組みつつ、定期的に施術を受けてもらえると、健康的に過ごしていただけると思います。
「なかなか治らない」「何度も繰り返す」という方は、ぜひ血液と水分の観点から、ご自身の生活習慣を見直してみてください。
当院では腱鞘炎でお悩みの方のご相談をお受けしていますので、お気軽にお問い合わせください。







