「走ると脛が痛い」「練習後に脛の内側がズキズキする」「朝起きたら脛が張っている感じがする」
そんなお悩みをお持ちの方は、もしかしたらシンスプリントかもしれません。
シンスプリントは、スポーツをしている方、特に陸上・サッカー・バスケットボール・バレーボールなど走る・跳ぶ動作の多い競技に取り組む方に非常に多く見られます。中学・高校生の部活動でも発症率が高く、「脛が痛くてもう練習に集中できない」「大会前なのに走れない」というご相談を当院でも数多くいただいています。
では、シンスプリントのとき、脛の中はいったいどんな状態になっているのでしょうか?今回はそのメカニズムをわかりやすくお伝えします。
脛骨(けいこつ)とその周りの構造について
まず、脛の骨のことを「脛骨(けいこつ)」と言います。すねの内側を手で触ったとき、硬くて細長い骨が触れると思いますが、それが脛骨です。
この脛骨の周りには「骨膜(こつまく)」という薄い膜が全体を包むように覆っています。骨膜は骨を外部の刺激から守ったり、骨に栄養を届けるための大切な組織です。また、骨膜には痛みを感じる神経が豊富に通っており、ここに炎症が起きると鋭い痛みや深いズキズキとした痛みを感じやすくなります。
さらに、脛骨の内側(後面)には「ヒラメ筋」「後脛骨筋(こうけいこつきん)」「長趾屈筋(ちょうしくっきん)」などの筋肉がしっかりと付着しています。これらの筋肉は、歩いたり走ったりジャンプしたりするたびに働き、足首や足指の動きを支える非常に重要な役割を担っています。
シンスプリントのとき、脛の中で何が起きているのか
シンスプリントは、正式には「脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)」と呼ばれます。名前の通り、脛骨の骨膜が過労によって炎症を起こしている状態です。
ランニングやジャンプ・方向転換などの動作を繰り返すと、先ほどお伝えしたヒラメ筋や後脛骨筋などの筋肉が収縮するたびに、脛骨の骨膜を内側から引っ張り続けます。一回一回の引っ張る力はごく小さなものですが、練習を重ねるうちに何千回・何万回と繰り返されることで、骨膜に小さなダメージが蓄積していきます。
そしてある一定のダメージを超えると、骨膜が炎症反応を起こし始めます。炎症が起きると患部に血流が集まり、腫れ・熱感・痛みが現れるようになります。これがシンスプリントの痛みの正体です。
初期のうちは「運動を始めた最初だけ痛い」「しばらく動くと痛みが引く」という方も多いのですが、これは体が一時的に痛みに慣れているだけで、骨膜へのダメージは蓄積し続けています。「動けば大丈夫」と油断せず、早めの対処が大切です。
なぜ骨膜に繰り返しストレスがかかるのか?
シンスプリントを引き起こしやすい背景には、いくつかの要因が絡み合っています。
① 急な練習量の増加
新学期・新チームへの加入・大会前の強化練習など、急に練習量や練習強度が上がったタイミングで発症するケースが非常に多いです。身体が十分に準備できていないまま大きな負荷がかかることで、骨膜への累積ダメージが一気に増加します。
② 扁平足・過回内足(かかいないそく)
土踏まずが低い「扁平足」や、足が内側に倒れやすい「過回内足」の方は、着地のたびに足のアーチが過剰につぶれるため、脛骨の内側に余計なねじれや引っ張り力が加わりやすくなります。これがシンスプリントの大きなリスクファクターのひとつです。
③ 足首や股関節の硬さ
足首の背屈(つま先を上に向ける動き)が硬くなっていると、着地の衝撃をうまく吸収できず、その分のストレスが脛骨に集中しやすくなります。また、股関節の動きが悪くなると走るフォームが崩れ、脛骨への負担がさらに増大します。
④ 硬い地面でのトレーニング・不適切なシューズ
アスファルトやコンクリートなど硬い地面でのトレーニングは、地面からの衝撃が直接脛骨に伝わりやすくなります。また、クッション性が不足しているシューズや、靴底が磨り減ったシューズも同様に衝撃吸収が不十分になり、骨膜へのダメージを増やします。
⑤ 体全体の重心バランスの乱れ
骨盤や背骨の歪み・左右の筋肉バランスの偏りなどがあると、走るときに特定の脚ばかりに負担が集中することがあります。こうした全身のバランスの乱れが、局所的なシンスプリントの発症につながっているケースも少なくありません。
放置するとどうなるの?
「多少痛いけど動けるから大丈夫」「テーピングをして練習を続けている」という方も多いのですが、これは非常に危険です。
骨膜への繰り返しのストレスが続くと、骨膜の炎症が慢性化し、さらに進行すると骨そのものが少しずつダメージを受け始め、疲労骨折(ひろうこっせつ)へと発展してしまうケースがあります。
疲労骨折になると、患部に強い痛みが出るだけでなく、完全な回復までに数ヶ月単位の運動制限が必要になることも珍しくありません。シーズン中に発症してしまうと、長期間の離脱を余儀なくされる場合もあります。
また、痛みをかばいながら練習を続けることで、フォームが崩れ、膝や股関節・腰などに二次的なケガが連鎖するリスクも高まります。「なんとなく痛い」の段階で、しっかり対処することが何よりも重要です。
大切なのは「表面の痛みを取る」だけではなく、根本から見直すこと
シンスプリントは、脛骨の骨膜に痛みが出ているとはいえ、問題の本質がそこだけにあるわけではありません。
なぜ骨膜がそこまで引っ張られ続けているのか、その背景には、足首の硬さ・足部のアーチの崩れ・股関節の可動域の低下・体全体の重心バランスの乱れなど、様々な要因が複雑に絡み合っています。
痛みのある脛だけにアプローチをして一時的に楽になっても、根本の原因が解消されていなければ、また同じ痛みがぶり返してしまいます。「痛みがなくなったからOK」ではなく、「なぜその負担がかかっていたのか」を身体全体から丁寧に評価し、根本から改善していくことが、シンスプリントを繰り返さない身体づくりへの第一歩となります。
シンスプリントでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。 痛みが出ない・繰り返さない身体を、一緒に取り戻していきましょう。







